眼瞼下垂はなぜ起こるのでしょう

先天的な眼瞼下垂は概ね上瞼のサイズが生来アンバランスであることから生じます。片方の、あるいは両側の上瞼が大きいため、上瞼を引き上げる筋肉(眼瞼挙筋=がんけんきょきんと呼びます)だけでは支えきれず、常に垂れ下がった状態になってしまうのです。先天的な眼瞼下垂の場合大抵は両眼性で、家族にも同様の症状が見られます。外見的には一見して瞼を伏せ気味にしているようにしか見えないので、ほとんどの人が疾病とは考えません。

こうした先天性の眼瞼下垂は我が国でも昔から例が多く、そのほとんどは「単なるルックス上の特徴」として認知されていました。「いつも寝ぼけた顔の昼行燈」「腹に一物ありげな食えぬ奴」「人を見下す高慢輩」などといった歴史上の人物に関する悪評のほとんども、実は眼瞼下垂によるとんだ濡れ衣であった可能性が考えられるくらいなのです。現代でも、眼瞼下垂の患者さんは「覇気がない」だの「陰険」だの不当な評価に苦しめられていると思います。

先天的な眼瞼下垂の場合、稀には上瞼の運動を司る筋肉・神経そのものにに不具合がある場合も考えられます。もし両親や家族に眼瞼下垂の症状が無ければ、こうした不具合である可能性があります。場合によってはさらに深刻な疾病による症状とも考えられますので、できるだけ早いうちに医師の診断を仰ぎましょう。加齢による眼瞼下垂は眼瞼挙筋の張力が衰え弛緩してしまうことにより生じています。症状の程度によっては、やはり治療が不可欠となります。

眼瞼下垂の症状の度合いによっては考慮が必要です。特にお子さんの場合、早めに手術を行ってやる必要があります。垂れ下がった瞼が瞳孔にまでかかっている場合、放置すればやがては弱視・斜視の原因となる可能性が高くなるからです。軽度の場合は無意識に、眉や額の筋肉が瞼の開閉を補うようになりますから、必要な視野を確保することが可能ですが、慢性的な頭痛・肩こりが持病として付随することになります。また、ものをよく見ようとするたびにかっと目を見開くくせというのは、傍から見るとなかなかうるさいものです。子供の頃からこうした眼瞼下垂に特有の症状で悩まされ続けていれば、性格形成にも問題が生じる心配も出てくるでしょう。

眼瞼下垂が後天的に生じるには様々なシチュエーションがあります。先ほど触れた加齢による眼瞼下垂もそうですし、お若い方でも心因性ストレス・肉体疲労が原因で眼瞼下垂が生じます。パソコンワークなど長時間目を酷使し続けると眼瞼下垂が生じる場合があります。動眼神経の不具合、頸部副交感神経の障害によっても同様の症状が発生します。筋無力症による症状が部分的に生じて眼瞼下垂を起こすことも考えられますので、こうした症状が表れたら放置せず、きちんとした診察を受け、適切な治療を受けることが肝心です。